第6回シンポジウム

10月21日、研究所テオリア第6回総会記念シンポジウム 安倍一強政治の“終焉” 民主主義と社会保障のこれから

田原牧さん(東京新聞特報部デスク)

稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授) IMGP4706 IMGP4652 IMGP4726

10月21日、第6回シンポジウム「安倍一強政治の“終焉” 民主主義と社会保障のこれから」を行った。

冒頭に、吉田和雄所長は「選挙結果はがっかりするような結果かもしれないが。単にがっかりしているだけではなく、私たちがどういう場でどういうことをやっていけばいいのか。希望を持てる話にしていきたい」と主催者挨拶。

最初に田原牧さん(東京新聞特別報道部デスク)が講演「私たちの流儀はいま(ポスト・グローバル時代の民主主義)」。

「安倍一強政治が当面続きそうな雲行き。
議会情勢とは別次元で、私たちが直面している課題がある。今回の選挙結果が思い通りにならなくても、落胆せずにやらねばならないことを淡々とやっていくしかない。

話すことを要約すると、やらねばならないことは経験の整理とにおいの2つ。今年は宗教改革から500年。ロシア革命100年。10・8羽田闘争50年。来年は3・26三里塚管制塔占拠闘争40年。安倍政治は左翼の敗北から生まれた。
もうひとつ。全く違うにおいがする空間をつくることが必要。においはスタイル、流儀。
モリカケ問題など権力の側のタブーのハードルが底抜けになっている。政治の動きに伴って、読者の脊髄反射も強くなっている。

「極右化」の穴の深さを見据えるべき。極右にとって批判者はただの敵にすぎない。世界的に顕在化している社会の分断は、2000年代初めから日本で始まっていた。これはネット普及とも絡んでいる。

社会が分断されていけばいくほど、社会運動は細くなり、一部の人びとは議会政党への期待を過剰に膨らませる。80年代の国鉄分割民営化で、階級意識が消費者感覚に変質していった。自己責任論で共感力が失われ、政治への無反応を亢進する。『こちら側の空間』が不可欠。
社会運動の失速、民衆の間の紐帯が何十年かの間に寸断されてきたことの結果として、現在のアベ政治の土壌ができている。深い地点から社会運動を再構築する必要がある。

流儀(スタイル)の大切さについて、気づかされたのはシールズの登場。シールズが出てきたことは、出てこないよりもはるかによかった。しかし、スタイルは嫌い(笑)。身体性は政治的な勘の涵養にも不可欠。歌って踊っての今日的な意味を考えた方がいい。
無数の居場所や根拠地づくりこそが大切。そうすれば、過剰な期待とは逆に、自分たちの持ち場が議会政党に対して命令するというベクトルが生まれる。『負け続けられる力』を涵養することが大切だ」

続いて稲葉剛さん(つくろい東京ファンド代表理事、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授)が講演「貧困の現場から社会を変える」。

稲葉さんは「昨年、小田原ジャンパー問題で、生活保護行政の実態が明らかになった。
市のホームページの生活保護の説明では、生活保護受給というのは難しいと受け取るような記述がされている。ネット版の水際作戦。

生活保護に関する監視と管理は強められている。11年8月、寝屋川市が生活保護適正化ホットラインを開設。
2013年4月、小野市で福祉給付制度適正化条例を施行。生活保護受給者がパチンコなどをしていたら、市民が通報することを定めた。
2015年、別府市、中津市でパチンコ店出入りを理由とした保護停止をしていたことが発覚。
2012年3月、厚労省が警察官OBの生活保護窓口への配置を進めるよう自治体に求める。

第二次安倍政権で生活保護引き下げのトリプルパンチ(生活扶助基準の引き下げ・住宅宅扶助基準の引き下げ・冬季加算の削減)が続いている。
政府は生活保護引き下げを正当化するために、「デフレ調整」という名の物価偽装を行った。生活保護受給者がパソコンを何台も買うはずもないのに。

生活保護基準というのは「保障の岩盤」=ナショナルミニマム(最低生活費)であり、「いのちの最終ライン」。その基準を下げることは、「貧困」の定義を変え、防衛ラインを下げること。

生活保護引き下げの第一次被害は、生活保護利用者の生活悪化。子育て世帯では貧困の連鎖拡大。高齢・障害・傷病世帯では夏・冬に生命の危機になる。
第二次被害は、ボーダー層を保護から排除。現金給付以外のサポート(見守り、医療・介護、学習支援など)も受けられなくなる。「老人漂流」が加速する。
第三次被害は他の貧困対策も基準が引き下げられる。就学援助、地方税の非課税水準、介護保険・国民健康保険の減免…。最低賃金の抑制・引き下げにもつながる。
こうして、自己責任論、制度を利用しないことが美徳とされる偏見・スティグマが強くなる。

第二次安倍政権がすぐ成立させた「改正」生活保護法によって、扶養義務者への「報告徴収」や開始決定前の「通知」が可能にされるなど、扶養義務者への圧力強化が強化された。
これは「絆原理主義」による憲法25条の形骸化だ。
2017年8月30日、「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」は、「日本も本気で貧困対策に取り組むのであれば、制度につながる人を増やす政策をとるべき。前近代的な扶養照会は段階的に廃止すべき」と提言した。

安倍政権は深刻な政策矛盾をきたしている。「貧困の世代間連鎖防止」「高齢者の社会的孤立防止」「障害者の地域移行支援」を掲げているが。それに逆行する政策を推進している。

生活保護引き下げに対して1万人不服審査請求を全国で起こし、引き下げ違憲訴訟を29都道府県、原告950人でたたかっている。
私たちは困窮者支援として、水際作戦をなくし、生活保護捕捉率の向上。ケースワーカーの増員・専門職化。「権利としての生活保護」を確立するための広報啓発。名称変更も含めたイメージアップ。資産要件の緩和、扶養照会の廃止を求めていく。
そして、生活保護の手前のセーフティネットの拡充、生活困窮者自立支援制度+空き家を活用した新たな住宅セーフティネットを求めていく」

報告を受けて、質疑応答が行われた。

講演は新聞テオリア11月号と12月号に分けて掲載。

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