移民社会・日本の課題(上)鳥井一平(新聞テオリア第89号・2020年2月10日)

新聞テオリア第89号・2020年2月10日
座標塾第15期第5回
移民社会・日本の課題
(上)
鳥井一平(移住者と連帯する全国ネットワーク)

 

真っ当な移民政策を

最近、この問題について話をする機会が増えている。今月だけで9回。今日は今週3回目の講演。大学や国際交流協会では以前から話していたが、NHK番組(「プロフェッショナル仕事の流儀」19年9月17日)で私の活動が紹介されると、高校から要請があって、先週は神奈川県立高校の一学年240人に体育館で授業をやった、来週は大阪府立高校でも話す。公民館とかでの話も増えている。関心が高まっている。
私は早口で活舌が悪い。全統一労働組合には40か国の組合員がいる。共通言語は日本語。読み書きは別だが、聞いたり喋ったりは結構できる。組合でミーティングすると、「鳥井さんの日本語わからない」と、よく言われる。
真っ当な移民政策を。もう始まっている多民族多文化共生社会。これが今日の話全体のコンセプト。
はじめに何が起きているか。居酒屋でのおしゃべりや職場の休憩時間、最近だと韓国の話が出る。これは気が付かないことでいろんな人を傷つけている。ずっと前から私たちの社会にはすぐ隣に韓国につながりのある人、中国につながりがある人たちがいる。折角、通名から本名になったのに、また通名にしたくなるような気分になる話をしたりする。それ以外にも、外国人労働者の話が結構出る。
その2。18年秋の臨時国会で何が起きたのか。話題になったのが入管法の改正。あっという間に通った。それで在留資格の特定技能1号、2号というのができた。どさくさまぎれに入管局が入管庁に格上げ。19年4月から、法務省の外局になった。
私は入管法改正の参考人ということで、これまで4回意見陳述をしている。今回も衆議院法務委員会に呼ばれたが、これまでと全く違った。
何が違ったのか。前日の夕方6時過ぎ、明日1時から参考人として出席してくれと連絡があって、法務委員会から資料が届いたのは当日の午前11時。まったく乱暴な話。そんなことは今までなかった。一週間前には連絡が入っていた。
どういうことかというと、通過儀礼として参考人の意見陳述をやらないと法案を採決できない。だから、とにかくやるという拙速で稚拙な議論。メディアが非常に驚いた。野党もなんかおかしいとなって、野党合同ヒアリングなどが開かれた。その中で、偽装、ごまかしで見ないことになっていた外国人がこんなにいたのか、こんなにひどい目にあっていたということが広まった。それで、メディアに露出する機会が増えたと思っている。

80年代に増えた移住者

日本にいる外国人は大きく二つのカテゴリーに分かれる。一つのカテゴリーはオールドカマー、つまり戦争に前後して無理やり連れられてきた、あるいは来ざるを得なかった人たち。国籍でいうと中国・朝鮮・韓国。もう4世5世もいる。
二つ目のカテゴリーはニューカマー。これは1980年度以降日本に移住した人々。バブル経済を背景にして来た人たち。
今日はニューカマーについての話。ヘイトスピーチなどあり、オールドカマーの人たちの権利に課題がないわけではないが。
1980年代以降に移住した人たち。「日本における外国人」、英語で「マイグランツ・イン・ジャパン」。これもごまかしている。なぜか。外国人はマイグラントでなく、フォーリナー。でも、英語圏の人に、日本にいる外国人をフォーリナーといっても解らない。実は外国人という言い方そのものに差別的な、あるいは排除する考え方が入っているということは踏まえていただきたい。それを踏まえた上で、よく使われている言葉なので外国人という言葉を使って話を進めたい。
日本の外国人登録者数、在留外国人数は、19年6月で282万9416人。1980年代まではオールドカマーが多かった。80~90年代、外国人登録者数が上昇カーブをえがいて今に至る。先ほどニューカマーを1980年代以後に移住した人と言ったが、極一部の研究者は1990年以降という言い方をする。これは政府がそう言っているから。つまり、御用学者が1990年代以降と言う。なぜかというと、1990年に日系ビザができた。それ以前はオーバーステイ=非正規滞在なので認めたくない。しかし、データを見たら一目瞭然。1980年代に増えている。
労働者は在留資格のカテゴリーによって分かれる。一つ目のカテゴリーは、就労できる在留資格。もってまわった言い方で、就労ビザ・労働ビザという言い方はしない。
どうしてか。日本にはないから。解っているような顔しながら解ってない人が多い。先進国の中で就労ビザ、労働ビザがないのは日本ぐらい。
在留資格は語学学校教師、コック、専門技術者など職種ごと。就労一般の在留資格はない。勘違いしている人が多くて、外国人をつかまえて、お前就労ビザを持っているのかと聞いたりする人がいるけど。あんたこそわかってないねという話。そんなものはない。

存在しない労働ビザ

コックさんがレストランが暇だからといって、工場や建設現場に働きに行ったりすると資格外就労。不法就労になる。どんな仕事でもできるのは、主にブラジル、ペルーからきている日系労働者や配偶者、永住者など身分に基づく在留資格の人はどんな仕事でもできる。
もう一つのカテゴリーでいえばオーバーステイ。ビザはないが、どんな仕事にもつける。
次が技能実習生というカテゴリー。この人たちは職種ごと。今日はこの人たちについては詳しく話します。その次のカテゴリーが労働者でない労働者。何かというと労働法が適用されない労働者。カッコつきのかつての「研修生」。
それから家事労働者,ドメスティックワーカー、家政婦さん。先進国で家事労働者に労働法が適用されないのは日本くらい。なぜか。ILO条約を批准していないから、これはずっと言われているのに、批准しない。
興行。70年代から始まった悪名高いエンターテイナーというカテゴリー。シンガーやダンサーということで日本に連れてこられて風俗業・性産業で働かされる。国際的批判が高まって現在は激減した。それでも、シンガーやダンサーで来て、新宿あたりでホステスとして働く。給料もらえないといって労働基準監督署に行く。
労働基準監督署で、ビザは何かと。エンターテイナーだねと。エンターテイナーだと労働法適用されません、残念だねと。ちょっと気の利いた監督官だと、で、あなたは何の仕事をしていましたかと聞いてくれる。席に座ってお酌をしていました、ホステスやっていました。じゃあ労働法適用されます、となる。ただし、資格外活動となる。入管法違反ですが、労働法は適用されるとなる。
その次のカテゴリーは難民、難民申請中。これも最近増えた。ところが難民受入れは少ない。日本の難民認定は18年42人。他の先進国に比べて二桁三桁違う。これも国際的批判があったので、「難民申請中」というカテゴリーを考えだした。難民申請をして6か月たつと風俗業と経営以外では働いてもいい。これで東京オリンピック・パラリンピックは大いに助かっている。難民申請中の人が1万人を超えて働いているから。
最後は留学。厚生労働省の外国人労働者のカテゴリーの中に留学が入っている。さりげなく言ったが、これはおかしい。だって、留学は労働者でないはず。ところが、たくさんの労働者がいる。
労働者人口を見ると。日本における賃金労働者は18年10月の総務省統計で5996万人。18年12月の厚労省発表が146万人。これは労働保険加入者数。3、4年前から外国人労働者が100万人超えたとメディアが言うが。私に言わせると、ようやく統計値が実数値に近づいてきた。労働保険に加入していない労働者がいるので、実際には146万人よりもっといる。
オーバーステイの人たちは直近19年7月で7万9千人と発表された。これまでこの時期には発表しなかった。93年はピークで29万8千人。実数は30万人を超えていたでしょう。バブル経済ではじけた後は減っていく。オーバーステイの人たちを狩り込んでいった。バブルがはじけたらともかく狩り込むというとんでもない非人道的、人権侵害のやり方。散々、お世話になった外国人労働者を、例えば上野駅の近くにバスを一台持ってきて、職務質問して狩りこんでいく。収容所がいっぱいになったら、しばらくは狩り込みはやらない、その繰り返しで不法就労半減化政策というのをやった。
「不法就労が犯罪の温床」というのはとんでもないデマキャンペーン、人権侵害。不法就労が犯罪の温床になった事実はこの30年間一度たりともない。「オーバーステイ」の人たちの犯罪発生率は非常に低い。警察白書を見ても明らか。冷静に考えたら当たり前。折角出稼ぎに来ているのに捕まったら元も子もない。できるだけ目立たないようにして一生懸命働いている。それを不法就労は犯罪の温床だという全くのデマキャンペーンをやってきた。
警察白書編纂にかかわっている大学の研究者も、なぜそんなことを警察が言うのかわからないと、どこの数字をとっていっているのかと言っている。外国人犯罪そのものも、入管法違反などを除いた刑法犯は下がっている。それは全然言わない。
ブラジル、ペルーその他を中心にした日系の人たちは2007年23万人がピークで08年から減った。08年はリーマンショック。しかし、日本の景気は回復している。しかし、人数は増えてない。なぜか。増やさないから。

スタートした外国人春闘

1993年3月、外国人春闘がスタートした。この3月8日には海外も含め、日本のテレビ全局が中継車を並べて、狭い事務所の中でガチャガチャっとカメラがぶつかりあいながら取材する。夕方夜のニュースは全部これだった。こんなに外国人労働者がいたのかと。
私たちでなくメディア(例:93年5月1日付け日経新聞)が外国人労働者春闘と言った。労働相談を受けているのも外国人労働者、ビラ入れしているのも、給料もらってないと訴えているのも外国人労働者。全員がオーバーステイ。地域の労働者が集まって給料もらってないと大きな声で騒いでいると警察が来て、穏便にやってねと。
当時はどんな状況だったか、警察官が職務質問して労働者にパスポート見せなさいと、見たらオーバーステイじゃないかということで交番に連れていく。そうすると、労働者が働いていた工場の社長が交番まで走ってくる。お巡りさん、その人を連れて行くとうちの工場は止まっちゃうと。警官は黙って戻した。ご都合主義もいいところ。
93年から省庁交渉も始めた。旧労働省とやった。この時は労働省一省だけ。省庁交渉を3月、11月と毎年2回やっている。今週が今年秋の省庁交渉だった。
今はほぼ全省庁を集めて議員会館で2日間かけてきっちり交渉している。労働問題だけでなく、あらゆる生活課題に関わってくる。だから、内閣官房、内閣府、厚生労働省、法務省、外務省、経済産業省、国土交通省、法務省、文部科学省、農水省、警察庁、国税庁。
ご存じですか。日本にいる外国人を担当する省庁はどこか。外務省です。えっと思うが、外務省外国人課。それはある意味で日本には担当する省庁がないということ。95年頃に外務省と交渉していると、鳥井さんそんなに言うけれどね、うちの課は6人しかいないんですよと言っていた。
オーバーステイの労働者がなぜ労働組合に加入できたのか。労働基準法第3条は、社会的身分を理由として差別的取り扱いをしてはならないと定めている。これを突破口として労災保険の適応を申請した。これで労働組合に加入できる、これでやれると。
それまではボランティア・NGO、女性団体、キリスト教の関係の人たちが献身的に支援していた。労働組合が参入して、外国人労働者が前に出ることができるようになった。その根拠が労基法。
私は移住者と連帯するネットワークの代表理事をやっている。労働組合でも書記長もやっていたが、自分ではオルグと言っている。今日の参加者はオルグといって通用する。移住連シンポジウムなどの参加者の中心は30代で、6、7割が女性。その人たちにオルグと言ってもなかなか通用しない。私は「炎のオルグ」と言われていて、本当に燃えたこともある。93年未払い賃金の仮差押えで、裁判所の執行命令を受けて、裁判所の執行官、弁護士、私たちが立ち合った。そこの社長が何を考えたのか、ガソリン撒いて火をつけた。本当に燃えちゃった炎のオルグという訳です。仏になったともいわれた。でも、これで得をした。信頼を得た。外国人労働者の中には、今でもそのことを知って訪ねてくる人がいる。

場当たり的な外国人労働者受け入れ

そういう中で、賃金未払、解雇、労災など相次ぐ労働問題がでてくる。実は労働問題の一言ではまとめられない。百の相談に百の物語がある。
なぜそういうことが起きるかというと、場当たり的な外国人労働者受け入れだから。
ただ「受入れ論議」が無かったわけではなかった。ただこの20年くらい、なぜか論議の大半が外国人研修・技能実習制度。「受入れ論議」の中心として、外国人研修・技能実習制度があった。今は外国人技能実習制度だが。ただ、外国人研修・技能実習制度として拡大してきたので、そのことから話をしないとこの制度は分かりにくい。いまだにメディアでも、国会議員でも研修生と言ったりしている。
まず、2010年の制度改正前から。外国人研修制度とは90年に在留資格「研修」ができた。目的は学ぶこと。内容は単純作業になってはならないということ。日本の外国人研修の受け入れは1950年代半ばから始まっている。開発途上国に技術移転するという目的でやっている。当時は、学ぶ活動なので、在留資格は留学の枝分かれとして研修があった。
それを90年に在留資格「研修」を創設した。そういう研修をもっとやってくれという要望が途上国からあったのかというと、どこをどう調べてもその事実はない。なぜ在留資格として独立させたのか。それは隠れた動機があった。技能実習制度を作るため。技能実習制度は93年から始まっているが、法律改正しないで制度を作った。
技能実習のビザはなかった。特定活動という在留資格を使い、研修を拡充するという概念を作った。労働法は適応しますと。フィリピンや中国やインドネシアからで、当時ベトナムからは少なかった。
面接試験をして入国する。研修1年で試験があって技能実習を2年。全部で3年のコースをやって帰国する。技能検定試験というのをやるけど、これは合格率100パーセント。なぜか。答えを教えるから。大体3つくらいの選択肢があるので、右、左、真ん中、左、真ん中、左と一週間くらい前に覚える。
本当の話。だって、日本語問題は読めない。間違えていると試験官が横に来て、こっち、こっちとやる。これは通すための試験。この試験通ったからって言って日本で何の資格にもならない。例えば、茨城県竜ケ崎にある自動販売機の大手メーカー工場。金属を曲げる板金、色を塗る塗装という仕事がある。インドネシアから板金と塗装で来る、板金で入国して、試験は板金、3年間ずっと塗装やって、修了証書は板金になっている。その逆もある。型枠できたけれど、型枠なんて触ったこともないとか。これが実態。
ある時から技能検定試験合格率が98パーセント、97パーセントになりました。権利を主張する研修生、実習生には答えを教えない。君は試験を落ちたから帰りなさいと。そういうやり方を今はやっている。
当時の流れで、一次受け入れ機関と二次受け入れ機関があり、研修生が日本に送り込まれて、それを国際研修協力機構(JITCO)が監理する。これはRD・議事録確認。政府間ではなく、送り出し国政府と機構が議事録確認をする。国の制度の話なのにこういうやり方をずっとしてきた。こうして、JITCO監理の研修生が増大した。
技能実習移行の研修生では女性が増える。理由は二つあります。
一つは職種。縫製はほとんど女性。食品も女性が多い。農業も、製造業もプラスチックなどは女性がいる。
二つ目の理由。社長は男が多いから。これははっきりしている。半年か一年に一回、中国やフィリピンに面接旅行に行く。今はベトナムが多い。面接旅行に行って、事前研修している人を並ばせて、この子とこの子と選ぶ。ほとんど人身売買感覚。受け入れ機関が営業で、あなたが受け入れませんかというファックスを企業に送って、そこにあなたが選べますと書いてある。
当時、技能実習に来る人の国籍はほとんど中国、ベトナム、インドネシア、フィリピン、タイ。上位5カ国はこの30年間変わりません。
従業員規模でいうと、50人未満が78・7パーセント、100人未満でほとんど。つまりほとんどが零細企業。零細企業に開発途上国に移転する技術がないのかというと、そんなことはない。全統一労働組合は上野に組合事務所があり、近所の工場では従業員3人で、非破壊検査器を作って中国やアジアのプラントに輸出。現地に備え付けに行っている。素晴らしい技術を持っている。しかし、零細企業には技術があってもお金がない。この制度は国や自治体から一切援助がない。企業の力で開発途上国に技術移転をするという制度。零細企業にそれができるか。賃金は、当時で10万から13万未満までがほとんど。最低賃金で働いているが実態。

実態は奴隷労働・人身売買

この制度の中で,相次ぐ不正労働行為、人権侵害があって、奴隷労働・人身売買といわれる。残念ながら、日本の公的機関から指摘されたことはありません。最初に指摘されたのが2007年アメリカ国務省の人身売買報告書。報告書で、日本の研修・技能実習制度がおかしいぞ、奴隷労働、人身売買じゃないか、と指摘される。アメリカ国務省というと、沖縄のこともありますし、問題はあると思うけど。2000年以降世界各国の人身売買、奴隷労働について議会に報告することが法律事項で、どんな政権でもやらなければいけない。やはり、リンカーン以降、奴隷労働根絶はやるということになっている。この人身売買年次報告書2007年版から2019年版まで毎年指摘されている。
国連では2008年国連人権規約委員会勧告で勧告が出た、以降ずっと続いた。2014年には国連人権規約委員会が2008年に勧告したのに日本は何もやってないと、いったいどうなっているんだと。
国際社会、国連人権機関の間では日本の外国人技能実習制度は、奴隷労働、人身売買として有名。知らぬは日本人ばかりなり。
私は米国務省「2013年人身売買年次報告書」の奴隷労働根絶のヒーローに選ばれた。受賞のためにアメリカに行ったが、今のトランプ政権でなくてよかった。
この外国人技能実習制度の象徴的な不正行為人権侵害としては、時給300円、強制帰国というのがある。時給300円とは何だ。
実習生の給与明細のタイトルを見ると。支給「予定賃金」となっている。つまり、これは実態でない。18年入管法改定でも、国会審議で野党から賃金がどうなっているのかと、どういう賃金になっているのかと聞かれると。政府は支給予定賃金はこうなっていますという答弁しかしない。

月400時間・時給300円

実態はどうか。賃金明細を見ると。時給が300円。労働時間は230時間、ただしこれは労働時間といっても、一か月の残業時間。ということは、法定労働時間が174時間で、174時間と230時間足すと、400時間を超えて働いている。
ちょっとイメージしてください。400時間超えるというのはどういう働き方か。土日も含めて毎日夜10時過ぎまで働かないと、230時間という残業はできない。私もプラスチック成形工場で三交代勤務で働いていた。変な話、三交代勤務は残業しやすい。通し勤務がある、朝8時から夜11時まで、一回やってみようと思って25歳の時に一回やりました。一か月で100時間残業した。へとへとです。それを230時間。
明細に「まとめ」とある。縫製業では内職仕事のことを「まとめ」という。寮に帰ってから一個10銭、20銭の内職仕事をやる。一か月やると7232円です。これをトータルして7万5232円が残業代。さっきのグラフは基本給。これは残業代です。ここまでが7万5232円ですね。これは、残業代でしょ。そうすると基本給はどうなるのか。ここに食費1万5千円と書いてある控除項目があって、引くのではなく足してあって、9万1千円になる。全く意味が分からない。
これはどうやって相談に来たかというと、岐阜の大学に留学生がいて、自分のいとこが岐阜の縫製業で働いてひどい目にあっている、相談に乗ってほしい、彼女たちは日本語を話せないと電話がかかってきた。電話でなくていい、手紙でいいということで、中国語でいいよと。中国語の手紙とともにこの明細が入っていた。
わからないので岐阜まで話を聞きに行きました。岐阜城の下で待ち合わせをした。どうしてそんなところで待ち合わせするのかなと思ったら。東京の全然知らない人なので変なのが来たら逃げようと思っていた。私の顔見たら安心したらしい。話を聞こうとして、ファミレスに行こうといったら、ファミレスって何ですかと、日本に来て2年半になるけれど、ほとんど外出していない。ファミレスで4時間話を聞いた。
全部の書類を持ってきて、初めて分かった。基本給が1万5千円。正確に言うと、現金で食費としてもらったのが基本給で、強制貯金が3万5千円あった。で、3万5千円と1万5千円で月5万円です。明細にはそんなこと書いてない。支給予定賃金計として入管に届けられたのは合計12万5千円です。これが支給予定賃金として、統計データとして現れている。12万5千円から5万円引くと、7万5千円ピンハネしている。どんなに費用がかかるとしても5万円は残る。経営者は月に100人受け入れると月500万儲かる。年間6000万。つまり、新しい、安い労働力を使えるっていうだけでなくて、技能実習制度という新しい利権が生まれている。

手取りがマイナスに

別の茨城県鉾田市にあった会社の賃金台帳を見ると。月18万円で、けっこうもらっているように見えると、手取りを見るとマイナス。なぜか。家賃が5万5千円。茨城県鉾田市で5万5千円なら、ものすごくいいところに住める。しかも、3人一緒。家賃16万5千円。布団リースが一か月6千円。年間7万2千円。ニトリに行けば、1万5千円で買える。それ以外に洗濯機、テレビ、調理器具といっぱいリースする。私は受け入れている理事長に、リースは分かったけど、どこのリース会社からリースするのかと聞いた。理事長が真顔で私がリースしてますと言いました。ピンハネですよ。
この理事長が現職市会議員で議長経験者の会社。
別の社長は労働者のトイレの使用時間・使用回数をチェックしている。1回何分トイレに行ったか。1分15円の罰金を取る。
愛知県豊田市にある超大手の自動車メーカーの下請け。この縫製業の工場では、実習生がミシン掛けをする。構内孫請け。
また別の10人の会社で一人が社長、9人が実習生。だいたい寮のベッドは蚕棚。岐阜の彼女たちの寮は寒い。室外機は3年間壊れたまま。食事をするときも、寝る時もダウン着たまま。ペットボトルにお湯入れて、抱きかかえて寝たと言っていた。3か月間くらい調査して、東京から15人くらいで岐阜行動をやった。事前に調べてみると、時給300円というのはその会社だけではない。岐阜の縫製業全部だった。これはやばいぞ。彼女たちを守らないと、とにかく泊まり込みで行こうと。事前調査をして一気に会社に行って、後は労働基準監督署、労働局、岐阜県庁に要請する。地元の岐阜一般労働組合にも支援をお願いした。
岐阜の縫製業界が大混乱になった。私が2泊3日ホテルに泊まっている間も次から次へ相談が来ました。ジャーナリストの安田浩一さんと初めて一緒に行って、後で安田さんが手に入れてくれたが。翌日、協同組合とかから縫製業者に一斉にファックスが行った。今岐阜県下を世界統一労働組合――いつの間にか世界統一になっている――と専門知識を持った不法就労の中国人通訳が企業を脅して回っている、気をつけろ、というファックスだった。この件は、この後で労働局が動きました。
(つづく)