新型コロナ肺炎を最大限政治利用 五輪優先で感染拡大させた安倍政権(新聞テオリア第90号・2020年3月10日)

新聞テオリア第90号・2020年3月10日
新型コロナ肺炎を最大限政治利用

五輪優先で感染拡大させた安倍政権安倍政権は、公選法違反の桜を見る会での有権者買収などについての虚偽答弁、憲法・法律よりも自らを上を置く検察人事への介入と、腐敗と独裁政治化の様相を強めている。

一方、新型コロナウイルス肺炎(COVID19)が世界的に流行の様相を見せている。権力私物化・独裁化を進める安倍政権は新型コロナウイルス問題を最大限政治利用している。
1月、中国武漢での新型肺炎流行拡大に対して、中国人、帰国者に対するヘイト・差別が相次いだ。これは「有害な人や物は常に外国から来る」と発想する排外主義そのものだ。
藻谷浩介は、インフルエンザ死者は日本で19年1~9月に3000人超え。アメリカでは今冬流行拡大で2200万人が感染、1万2千人が死亡(新型コロナは2月20日までで世界の感染者7万人台、死者2千人強)。それでも、米国からの入国制限の声は出ておらず、既存インフルエンザの死者数に触れないまま、新型の脅威だけが騒がれていることを指摘している(毎日新聞、2月16日)。
安倍政権の水際対策でウイルス流入を阻止できるという当初の対応はグローバル化の現実を無視した妄想であり、対策の遅れにつながった。
新型肺炎を改憲に利用
安倍の腹心である世耕弘成(自民党参院幹事長)は1月29日、参院予算委員会の蓮舫参院議員の質疑中に「このシチュエーションで感染症について質問をしない感覚に驚いています」とツイッターに投稿。安倍政権の度重なる虚偽答弁を棚に上げ、新型コロナを野党攻撃に利用した。
更に安倍自民党は、1100万人都市武漢を封鎖した習近平政権にならうように、感染症対策を口実とした人権制限を可能とする緊急事態条項改憲を主張している。
自民党の伊吹文明(元衆院議長)は1月30日に「(強制入院などに)周知期間を置かなくてもよくするには憲法を変えないと」「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」(共同通信)と述べた。
緊急事態条項は大規模災害などを口実に、首相が緊急事態を宣言。立法権など権力を内閣に集中させて、基本的人権を制限する条項だ。
野党が指摘しているように、現在の感染症法、検疫法などによって、感染拡大を防ぐために患者を強制的に入院させ、就業を制限できる。空港や港の検疫では、感染が疑われる人が見つかれば検査や診察を指示できる。感染が確認されれば受け入れ態勢が整った感染症指定医療機関に入院するよう勧告でき、従わなければ強制的に入院させることができる。
2月1日、政府は新型コロナを感染症法の「指定感染症」と検疫法上の「検疫感染症」とする政令を前倒し施行した。さらに入管法を拡大解釈し、入国申請時から14日以内に中国湖北省に滞在歴がある外国人の入国を拒否する措置も取った。現行法によっても、これほどの強制措置が取られているのだ。
感染症が改憲の口実にされる一方で、感染症対策を担う国立感染症研究所の研究費は09年60億円から18年約40億円まで削減されている。
伊吹発言に続いて、自民党新型肺炎に関する対策本部(1月31日)では、「憲法改正への理解を国民に求めるべきだ」との声が上がり、鈴木俊一(総務会長)、小泉進次郎(環境相)などから緊急事態条項に賛成する発言が続いた。
下村博文(自民党選対委員長)は「人権も大事だが、公共の福祉も大事だ。直接関係ないかもしれないが、(国会での)議論のきっかけにすべきではないか」「大規模災害などへの対応のため憲法に緊急事態条項を盛り込んだ場合でも、国家主義的な強権政治で圧政に向かうことはない」(2月1日)。
安倍政権はどこに向かっているのか。第2次政権の7年間を見れば、「圧政に向かわない」のではなく、圧政を圧政と呼ぶことが許されない社会に向かっている。

東京五輪こそ中止せよ!

安倍政権の新型コロナウイルス肺炎対策は矛盾をはらんだものだ。

疑惑隠し・改憲に新型コロナ肺炎を最大限政治利用している。同時に国家主義イベント=東京五輪実施のため、ウイルス流行の事実を矮小化しなければならない。
この矛盾は、反中国・反韓国の排外主義を煽り立てながら、経済政策では中国からの観光客(インバウンド需要)に依存している安倍政権のあり方の反映と言える。(アベノミクスで唯一目標を達成しているのがインバウンドだ。)
安倍政権のお粗末な対策を代表するのが、乗客乗員3711人中621人感染(2月19日現在)、検疫官・厚労省職員まで感染という事態になったカジノ船ダイヤモンド・プリセンス号の感染蔓延だ。
同号をめぐっては、岩田健太郎(神戸大教授)が船内でグリーンゾーンとレッドゾーンの区分けがされていないことを動画で指摘(その後動画を削除)。海外メディアは「防疫対策は疑いもなく失敗した」と安倍政権の対策のお粗末さを批判している。
上昌彦(NPO法人医療ガバナンス研究所理事長)は、「検疫法では検疫所長に大きな権限が与えられており、旅行者の健康と人権を考えて隔離の判断をする。本来は政治権力と一線を画すものだ。だが今回は、東京五輪の開催や支持率などの雑念が入った政治家が、超法規的に事実上の隔離を判断した。法に基づかず身体拘束しているとも言え、医学史に残る不祥事となった。」(毎日新聞、2月20日)と政治家の介入が感染拡大を招いたことを批判した。
現在、感染経路が分からない感染者が各地で見つかっている段階で、感染規模の予測はできない。
感染者の中には解熱剤を飲んで出勤していた医師がいた。発熱など体調が悪くても出勤しなければならない日本の企業優先の社会あり方こそが問題にされるべきだ。
安倍政権はコロナ対策として、テレワーク・時差出勤の推進、「不要不急のイベント中止」を求めている。
にもかかわらず、安倍政権・東京都は東京五輪だけはそのままやろうとしている。新型コロナ対策のために不要不急なイベント中止というのならば、聖火リレーなどの東京五輪へ向けてのイベントこそ不要だ。東京五輪こそ中止せよ。(2月22日)  藤岡雅順