反貧困ネットワーク全国集会2020(新聞テオリア第90号・2020年3月10日)

新聞テオリア第90号・2020年3月10日
当事者の声を聞け!!!
反貧困ネットワーク全国集会2020

当事者から見える課題

 2月15日、反貧困ネットワーク全国集会2020 「当事者の声を聞け!」が、上智大学で開催された。
集会では宇都宮健児さん(反貧困ネットワーク代表世話人)の挨拶の後、3つのテーマによる課題別、全国的な報告があった。
竹信三恵子(ジャーナリスト)さんがコーディネイターをした「当事者が置かれている実態から見える今後の課題」では、赤石千衣子さん(NPO法人しんぐるまざあずふぉーらむ理事長)が「新入学お祝い金を受給した世帯の状況と新入学時の困難」を独自調査を元に報告。ひとり親世帯の相対貧困率が日本は先進国で最悪。こどものいる世帯の平均年収707万円に対し、母子世帯は200万円、父子世帯398万円。入学時にかかった費用は高校で30万円。2019年から4万円が、支給額は子どもの1人160万円から3人270万円数による所得制限がある。
ひとり親世帯は80%が働いているが4分の3が非正規、正社員でも224万円。2020年から児童扶養手当の支給が4ケ月に1度から2ヶ月に1回になることには65%の人が「うれしい」と回答した。
岩崎詩都香さん(高等教育無償化プロジェクトFREE)は、学費・奨学金に関する1万人実態調査を元に学生のリアルを報告。「日本はOECD諸国で下から2番目に低い教育支出、高授業料、低補助の国。学生の生活費は1日677円。今年度から実施される授業料の免除、給付型奨学金の修学支援法は、年収270万円未満の世帯が対象で非常に限定されている。消費税増税が財源。今まで支援を受けていた人の少なくとも2・4万人が給付を受けられなくなる。
大半の学生はバイトで疲れている。英語民間試験を延期させた高校生の運動が高等教育無償化への励みになった。韓国でも「大学登録金半額化運動」がおこり、2011年から負担が半減した。3月ソウルを訪問する」
白石孝さん(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長)は、「公共サービスを担う非正規公務員が3割を超えている。その7割が女性。欧米では圧倒的に公務員が担うヘルパーも民間労働者。労働契約法もパート労働法も適用されず民間以上の格差がある。新たに始まる会計年度任用職員制度が官製ワーキングプアの解消につながらないばかりか、有期雇用と労働時間差別固定化になる。フルタイムは期末手当と退職金が支給される。パートタイムは期末手当はでるが、退職金はでない。生活水準必須分野で普遍的政策を実現し、国、自治体財政を見直し、税制転換の実施を。協働統治の社会運動を進めていこう。韓国に学ぼう」
生活困窮者を支援
 第2セッションは白石孝さんがコーディネイターで、斎藤縣三さん(特定非営利活動法人わっぱの会相談所)が生活困窮者に生活資金貸与する「ソーネ基金」の取組を紹介した。「わっぱの会は愛知県でも一番古くから活動している障害者の協同作業所などを運営している。2015年に生活困窮者自立支援法ができて4つの事業を展開し、国、自治体から助成金などを得てさまざまな生活困窮者を支援している。
ところが、公費は人件費には充てられるが生活困窮者には1円も貸せない。生活困窮者自立支援法による10万円限度の緊急小口貸付金は愛知県で年間2人の利用者しかいなかった。それで社会福祉法人共生福祉会が運営し、28団体が賛同(2019年11月現在)。個人・団体に寄付、出資を募ることにした。目的は「生活に困っている人や社会的に孤立している人」への「社会的、経済的自立が可能となる活動」をすることにあり「生活に困っている人々への貸付」と「貸付対象者への生活支援活動を行う。2020年3月から運営予定だが、中日新聞が1面で取上げてくれたら寄附金目標1千万円に対し300万しか集まってないのに、貸付申し込みが多数あった(笑い)。
チョン・ソンオクさん(ソウル市東 北4区公共給食センター長)は、有機農産物を使用した完全無償化給食と公共給食の取組を紹介した。(前日にはパルシステム生協でも報告会がされ注目されている。)
清野賢司さん(特定非営利法人TENOHASI事務局長)、武石晶子さん(世界の医療団ハウジングファースト東京プロジェクトコーディネーター)、当事者スタッフの渡辺さんからは、「住まいは人権である」という観点からのハウジングファーストの取組が報告された。
当事者のナベさんは39回無料低額宿泊所(無低)を脱出し、40回目にてのはしの支援でアパートで生活できるようになった体験談を報告。劣悪な相部屋生活で11万550円の生活保護費を受け取っても手元には8050円しか残らなかった無低のひどさと支援の大切さを訴えた。
悪質な引き出し屋
 第3セッションでは雨宮処凛さん(反貧困ネットワーク世話人)の進行で宮城、埼玉、群馬、愛知、京都などからの報告。オリンピック開催、開発による東京都大田区、渋谷区などでの公園「整備」による路上生活者排除の実態も明らかにされた。ひきこもりの会の弁護士と当事者からは「引き出し屋」と呼ばれている悪質な業者による事例が報告された。
「ひきこもりの原因の6割は就労が原因。
引きこもり家族の依頼で半年で当事者を就労させ自立させるなどといって300万から500万円を受け取る」(弁護士)。発言した当事者は、4人ぐらいに車で拉致され、抵抗すると精神病院に連れ込まれ入院させられたという。(この業者を裁判で訴えているが倒産して雲隠れしている)
キャバクラユニオンの布施えりさんは「人がいない。金がない。元気がない。キャバクラ問題は子どもの貧困、精神疾患、発達障害などが原因。月収10万円台と収入も下がっている」と支援者と当事者の厳しい現実を報告した。
今年の反貧困集会を通して感じたことは3つある。1つは格差・貧困問題の多様化、困難化が放置、継続されていることである。共通しているのは福祉、教育、労働問題の是正も自己責任に負わせる社会と政治を変えていくことの必要性である。
2つめは、特に普遍主義による教育支援、子ども、女性、貧困当事者支援の意義と効果が強調されたことである。
3つめは、財源がないという政府の教育、格差対策の所得制限などによる分断、不十分さに対して、課題を越えてつながる下からの取組と政治を変えていく方向性を合わせもった視点をもつことの大切さにあらためて気づかされた。(吉田和雄)