第13回シンポジウム「世界はますます分断に向かうのか」開催

11月9日は研究所テオリア第13回シンポジウム「世界はますます分断に向かうのか」が行われた。
 吉田和雄の司会で進められたシンポジウムでは、で宮崎礼二さん(アメリカ経済、明海大)が講演「分断が進むアメリカ」。
トランプ再選の背景にあるアメリカ社会の地殻変動について「アメリカの人種構成では白人の人口比率が減少。アメリカは先進国で唯一平均寿命が低下。白人の絶望死が増加している。
絶望死の地理的分布を見ると、絶望死が多い地域でトランプは勝利した。
産業構造転換とグローバリゼーションで矛盾は重層化。富の二極化が進み、対話・融合は不可能になった。有権者の半数は小さな政府はアメリカの伝統と、国民皆保険なしを支持している。
絶望的閉塞感が漂う中で、誇りを取り戻しアメリカ第一主義での経済復活への期待がトランプの勝利となった」と講演。

木戸衛一さん(現代ドイツ政治、大阪大学)は講演「極右・ポピュリズムの伸長と欧州」。
「今日11月9日は1918年共和国宣言、23年ミュンヘン一揆、38年ポグロムの夜などドイツ現代史で重要な日。
今のドイツはイスラエルを一方的に支持。イスラエルに抗議してスタンディングしたユダヤ人が反ユダヤ主義で逮捕。一方でガザに里帰りしたドイツ国籍パレスチナ人が空爆死しても、ドイツ政府は何もしない。二重基準がある。
6月欧州議会選挙で極右勢力が躍進。人々の政治意識が内向きかつ感情的近視眼的になっている。「帝国的生活様式」維持の願望があるのだろうか。
欧州極右が再編され、メローニ、オルバーン、フィツオが政権の座に就き、オーストリアでは極右・自由党が第一党に。
先日連立政権が壊れて総選挙繰り上げが予想されるドイツでは「ドイツのための選択肢」が伸長。世論調査でも極右ポテンシャルが拡大。一方で「左翼ポピュリズム」(?)のザーラ・ヴァーゲンクネヒト連合が伸長。
トランプをはじめとするポピュリズム・極右は世界的に甚大な地政学的影響を及ぼす。
国境を越えたグローバルサウスとの連携、市民社会の連携が必要になる」

講演後、質疑応答が行われ、第二期トランプ政権の政策、大企業との関係、選挙制度の問題点などについて議論が行われた。
シンポジウム内容は、新聞テオリア25年1月号に掲載予定。