座標塾第3回働くことが壊されている―介護現場から開講
7月21日、座標塾第19期第3回「働くことが壊されている――介護現場から」を開講しました。講師は伊藤みどりさん(ホームヘルパー国家賠償訴訟原告)。
伊藤さんは「私は古希だが、ヘルパーでは若手。80代もいる。長年労働運動をやっていたが年金では生活できないことを自覚してヘルパーを始めた。当時は人気職場だった。
だが、12年改定から効率性・生産性を求める介護報酬改定が強まり、切り下げが進められてきた。以前は1時間、45分だった1回の仕事が、効率性・生産性優先で20分、30分になり、利用者からは『もうちょっとゆっくり食べさせて』『焦らせないで』と言われる。
しかも、利用者の家から家への自転車での1時間移動も16分にしかならない。
切り下げられる実態を記録していたが、19年11月ホームヘルパー3人で国賠を提訴した。
介護保険制度(2000年)は介護の社会化を目的に成立。日本の労働政策は、ディーセント・ワークの流れに逆行して 膨大なインフォーマルワークを生み出した。ILO条約にも反している。
訪問介護の現実は偽変形労働時間制。労働者派遣の「原則自由化」で介護業務も派遣が可能になり、介護保険制度は実績出来高支払いになった。
高齢者にとっても家族にとっても介護労働者にとっても介護の社会化は崩壊寸前。人材確保は絵に描いた餅。
厚生労働省統計の取り方はおかしい。所長1人の所得を調べて介護職場の賃金は上がっているとするなど、嘘だらけ。審議会では人材派遣会社のための政策が進められている。
コロナ禍でエッセンシャルワークといわれる生存のために必要なサービスはほとんどが短時間のシフト制労働者が担っていることが明確になった。女性活躍推進政策の女性の賃労働進出は長時間労働・男性・ケアレスを標準モデルにしてきた。
ケア労働は「介護の社会化」を目的にしたが、女性の低賃金の周辺的労働者を大量に活用した。
介護施設では報酬引き下げによる人手不足でナースコールがなり続けている。介護ではなく、刑務所と同じだ。
労働がAIによって置き換えられても、ケア労働は残る。育児、家事、介護など制約のある人たちの働くことを標準にする必要がある。ケアを軸にした労働のあり方への変革が必要。
週3日労働でも健康で文化的な最低限の生活保障を」
質疑応答では、崩壊寸前の日本の介護の実態について、労働者、利用者としての経験から様々な意見が。
伊藤さんは「介護保険は20年間一度も赤字になったことはない。報酬を引き下げないと破綻するように言われるのは政府の詐欺」「週3日労働でも生きさせろ。最低賃金を上げろ」と強調した。