座標塾 悪戦苦闘する農業――いま、農村で何が起きているか菅野芳秀さん講演

9月15日、座標塾第19期第4回「悪戦苦闘する農業――いま、農村で何が起きているか」。菅野芳秀さん(農民)が山形からオンライン講演。

菅野さんは「農村ではどこもかしこも大型基盤整備が行われているが、小農放逐の結果、小農・家族農の参加する余地はない。主軸は企業農業(建設業)。従事者に地域生活者がいない。私たちにとっての時が来るが、同時に農民は絶滅寸前のトキだ。
日本の農政では、生産費を賄えない低米価政策が続く。
離農の促進(奨励金)政策で農家、農民を除外する農業政策が推進されている。
どの農家も、農機具が壊れたら、農機具更新費を今の低米価では賄うことはできず、離農を迫られる。
農村では大規模圃場の広がりと小農の切り捨てが進んでいる。
大規模圃場が作る田んぼの風景は、若草の季節に枯草の風景、生き物がいない水田。
大規模圃場の一方で更なる過疎化、食料生産の工業化が進む。
戦後自作農の「農終い」になろうとしている。
次代の「希望」に間に合うのか?
地域農業のもう一つの途の7条件は①生態系を乱さない農法・・その地域的展開②循環を地域的に考える・・(レインボープランなど)③多様性の共生社会としての地域社会の実現(ともに生きていける社会)④地域の自立と自給(都会の植民地にならない地域・新しいローカリゼーション)⑤参加型民主主義(地域の命運を国家に預けない。操縦桿を住民が握る・住民自治・廃県置藩)⑥地球的視点⑦ともに生きるための農業(農家に限らず、望めば農に関われる「国民皆農」への道づくり)。
この7条件を重ねて見える社会こそ、われわれがめざすべき地域社会ではないか。
新しいローカリゼーションとしては、地域自給圏・農民と市民の連携が求められる。
 そうすれば国は沈んでも自分たちの生活圏は破綻しない。
 食と農の自給圏は、人肌の体温を持つ地域社会の回復運動。
 世界観を孕んだ、足元からの小さなの取り組みとして、小農、家族農を中心に、地域にいのちのつながりを創り出す。第2に地域農業との小さな循環の輪をつなぐ。そして、地域自給圏の全国ネットを創り出し、政策提案を進める」

質疑応答の後、菅野さんは「私は50年間農業の運動を続けてきた。自作農がどんどん減っていくのを横目に、そうではないオルタナティブな運動を提案、実践してきた。企業農業には地域づくりはない。絶望感を感じながら闘っている。人がいなくて、頭を抱えて悶々としながら、トキになってしまっている農民がどのような未来への懸け橋をつくれるのか」と結んだ。