シンポジウム「日本政治の分岐点」を開催

10月15日、研究所テオリア第12回シンポジウム「日本政治の分岐点」を開催。
講演「維新「身を切る改革」の実態を検証する」で吉弘憲介さん(桃山学院大学教授)は維新を財政分析から見る意味について講演。

「大阪維新を財政・政策分析から再考すると。維新は均衡財政主義的で政府規模も大きいままで「小さな政府」ではない。

地価上昇エリア、アッパーミドル層が多い区で維新支持が高い。

大阪が特殊ではなく、政党支持分析では維新の強固な支持層の部分だけが全国平均と違いがある。政策の好みで大阪と全国との違いは生活保護評価だけ。高齢者と若者では高齢者が支持している。

大阪の1人当たり県民所得・雇用者報酬は低下傾向で成長・分配がうまくいっているのかは疑問。

維新はアッパーミドル層を取り込むためのユニバーサリズム。

均衡財政主義の結果、都市における再分配が弱まり、マイノリティへの資源配分が不足する危険性をはらむ。

新しい分配のデザインを構想する必要がある」と講演。

内田聖子さん(アジア太平洋資料センター共同代表)は講演「日本におけるミュニシパリズムの可能性」

「過去20年間の杉並区政は、新自由主義政策と規制緩和、憲法改悪・歴史修正主義、多様性の否定。

22年6月杉並区長選挙では岸本聡子を立て、投票率が5%上がり、187票差で当選した。

杉並区長選勝利は、国際的現代的には新自由主義に抗う「恐れぬ自治体」、ミュニシパリズム(地域主権主義)の流れにある。

今年4月、「区長は変わった、次は議会だ」と区議選に取り組んだ。

区議選は投票率43.66%、4.19ポイントUP(約2万人)。岸本さんを応援した女性が多数立候補し、48議席のうち新人15人。現職12人落選。女性は24人、男性23人、非公表1人。上位4名はすべて新人女性。上位15名では10名が新人(女性9、男性1)。

ミュニシパリズム(municipalism)とは地方自治体の意である municipality から来ている現在進行形の新しい政治、社会運動。municipalism は地域で住人が直接参加して合理的な未来を検討する実践によって、自由や市民権を公的空間で拡大しようとする運動。

バルセロナなどでは、コモンズ(公共財)の拡大、いのちと環境を守る政治が行われている。東京の西部でも「ローカルイニシアチブ」が拡大している。

日本におけるミュニシパリズムを実現するための課題は、一つは長年にわたる市場化・民営化。国・東京都による政策的・財政的な縛り。
2つ目に民主主義の「負債」。住民参加のしくみや合意形成の硬直化、行政と住民の信頼関係の欠如。
3つ目は住民自治の「反対」する運動から「創造・提案」する運動へのアップデート。

区長は変わったが、ハラスメント・人格攻撃など反撃も大きい。大阪の人と会うとお互いにがんばろうと言いあっている」

講演後、質疑応答。
シンポジウム内容は新聞テオリア12月号に掲載予定。