座標塾第20期第1回「人口問題の行方――少子化対策の何が問題か」開講

3月15日座標塾第20期第1回「人口問題の行方――少子化対策の何が問題か」を開講しました。講演は白川真澄さん。

講演で白川さんは、「1950年25億人だった人類が現在は80億人。急増した世界人口は2064年の97億人をピークに減少する。過去200年の世界人口急増、今後の人口減少は人類史の大きな転換。
出生率の予想以上の低下で人口減少時代がずっと早く来る。人類初めての人口衰退の時代。アフリカを除くグローバルサウスでも人口増加率が急低下。日本の総人口は2004年をピークに100年間で100年前の水準に戻る。
 人口は減っていいという立場だが、急激な人口減少は社会生活の危機を引き起こす。コミュニティの崩壊、公共インフラの消失、介護サービスが受けられなくなる。介護・医療、運転、建設など生活を支えるエッセンシャルワークで深刻な担い手不足が生じるのは、その仕事の必要性やスキルの高さに対する社会的評価=賃金が極端に低いから。
 日本の労働力不足は2040年1100万人と予測されている。
 岸田政権は「異次元」少子化対策には落し穴がある。少子化が急激に進む理由には子育てや教育にかかる費用の増大にもかかわらず、多くが家族の自己責任にされ、教育費の自己(家計)負担が際立って大きい。第二に育児の負担が女性に過重にかかっている。第3に若い世代が置かれている低所得で不安定な労働・生活環境がある。
 岸田政権対策は児童手当の拡充を柱にした経済的支援の強化が中心。ジェンダー不平等の変革に切り込まない。
 人口減少社会を「豊かな社会」に変える人口減少社会とはどのようなものか。
 少子高齢化はいっそう進み、労働力が圧倒的に不足。経済が成長・拡大できなくなる。そうではなく、ケアを中心にする社会・経済への転換を。社会的必要性の高い分野に投入する脱成長戦略が必要。情報・金融、半導体製造、自動車輸出など収益は高い(儲かる)が社会的必要性の低い分野は大胆に縮小する。ガソリン車、アパレル産業、広告産業、宅配やコンビニの過剰サービス、計画的陳腐化などは縮小・廃止していく必要がある。
ケアをはじめ農業・再エネ・公共交通・生活インフラ整備など社会的必要性の高いエッセンシャルワークの報酬を大幅に引き上げ、多くの人手を引き寄せる必要がある。
『分散型の社会システム』に転換していく。人びとが「歩いて楽しむ」都市、「耕す都市」の創造など地方分散型社会を構想していく。
ベーシックサービスと限定的ベーシック・インカムを実現し、財政支出は拡大していくので軍事費削減して、社会保険料の負担は減らし、公正な増税を実行していく必要がある。」

質疑応答ではオンラインと会場の参加者から発言が続いた。


次回第2回は「ウクライナとパレスチナ――2つの『戦争』をヨーロッパ問題として考える」。鵜飼哲(一橋大学名誉教授)。文京区民センター3階D。