成田空港拡張反対!土地取り上げを許すな!横堀農業研修センター裁判報告集会開く
5月17日「成田空港拡張反対!土地取り上げを許すな!横堀農業研修センター裁判報告集会~6・16判決を前に」が都内で行われた。主催は横堀農業研修センター裁判を支える会。参加者は48人。
成田空港会社は空港機能強化(第3(C)滑走路新設、B滑走路延伸、夜間飛行制限緩和)の2028年度完成を掲げ、第3滑走路誘導路建設のために横堀農業研修センターを破壊しようと、23年8月千葉地裁に提訴。強制買収、仮執行宣言を含む強制撤去の判決による横堀農業研修センターの強奪を目指している。
集会では被告の柳川秀夫さん(三里塚芝山連合空港反対同盟)が映像メッセージ(要旨別掲)。
続いて被告の佐藤幸子さん(元合宿所常駐者)が発言(要旨別掲)。
平野靖識さん(三里塚歴史考証室)は昨年11月11日の第4回裁判で証言したことについて「円卓会議の隅谷調査団最終所見での『空港用地取得のためにはあらゆる意味での強制的手段を用いてはならず』の強制的手段とは強制代執行だけではなく、民事裁判、民事執行を含む。そのことを熱田派は88年に認定20年で事業認定は失効するという論戦をしかけてから、論戦の中で明らかにしてきた。
05年のB滑走路延長問題での黒野社長との話し合いを見れば、話し合いがとん挫しても強制的手段は用いられてはならないというのが、『あらゆる意味で強制的手段は用いられてはならない』の正しい理解」
清井礼司弁護士は映像メッセージで、「柳川さん、平野さんの証言が裁判所に対して、それなりに感銘を与えたと自負としては思っている。
控訴審へ言い忘れたこと、言い足りなかったことを早めに書面化し、皆さんに大きく協力を求めてやっていきたい。仮執行宣言がつかなければ最高裁まで強制執行はできない。
センターを日常的に使っていることを見える形で、空港会社・高裁・最高裁に伝わる形で継続していく。日常活動として使うことを心がけていきたい。
平野さんも栁川さんも形式論理ではなく、心に思っていることを語ったことが感銘力を与えた。それで直ちに勝つわけではないが、主張を貫き通し、最大限の抵抗を示した。1日でも長く現場を保持する闘いが必要。
いずれにしろ控訴するので、準備を進めていく。使っていることは急いでもしょうがないということを刻印づける。使っていれば簡単には手を出せない」
山下一夫さん(三里塚大地共有運動の会事務局)は裁判解説で、成田空港会社に対する反対同盟・被告・弁護団の反論として、そもそも土地の位置が特定できてない。提訴はシンポ・円卓会議でのあらゆる意味での強制的手段はとらないという約束に反する。空港会社が主張した研修センターは旗開きでしか使用されてないというのは事実に反する。空港会社の全面的価格賠償方式を使った共有地強奪は権利濫用であること。滑走路誘導路は計画図のたびに変遷しており、研修センターの土地の強奪に何らの緊急性がないことを指摘した。
加瀬勉さん(多古町)から寄せられた「5・17横堀裁判闘争に対する決意表明」を紹介。
休憩中に高橋悦雄さんが歌「三里塚決戦のプロロ-グ」を披露。
28年度完成は不可能だ
集会後半、山口幸夫さん(三里塚大地共有運動の会代表理事)は空港と環境問題ついて話した(要旨別掲)。
辻和夫さん(三里塚大地共有運動の会事務局)が強引に進められる第3滑走路工事の現状について報告。
「更なる機能強化で空港敷地は2297ヘクタールに倍増。機能強化ではC滑走路新設(3500メートル)、B滑走路延伸(3500メートルへ延伸)、新誘導路(7471メートル)が計画されている。
空港会社は『新しい成田空港』構想検討会を9回開催。24年7月国交省に報告。国交省は『今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会』は昨年9月から開催中。主な内容は横堀、木の根へ統合する旅客ターミナル新設、貨物ターミナルの一鍬田、中谷津地区への新設、空港アクセス強化からなる。
報道によると、拡張用地の2割は未買収。空港会社は5月に国交省と用地確保対策本部を発足させた。
5月、滑走路本格着工だが、C滑走路南側造成工事(その1)と同北側造成工事は今年3月契約。工事は遅れている様子だ」
大森武徳さん(木の根、三里塚大地共有運動の会)は「木の根プールを再開して14年。昨年プールの補修をした。今年も8月プール開きに向けて7月に作業する。
木の根ペンションに太陽光パネルを設置しているが、蓄電することで東電と手を切りたい。
野外の映画祭の準備を進めている。そして、イベントの時には5、6人の希望者を募ってプチ戦跡巡りツアーを行っている。
有機農業の発祥である成田で、学校給食への地域の有機野菜を使用する取り組みを進めている」
最後に行動提起で、6月16日判決傍聴行動、6月7日横堀整理作業、6月29日裁判報告現地集会・デモの呼びかけが行われた。

土地を取る必要はない
柳川秀夫
(被告、三里塚芝山連合空港反対同盟)
裁判は合宿所を取るのが目的。どうなるか分からないが、あの場所を奪うのが目的だから、流れとしては6月16日の地裁判決に期待することはできない。だが、横堀には鉄塔の土地もあり、やつらが手を出すことはできない。
こちらの主張としては土地を取る必要はないと言ってきた。向こう側と折り合うことはない。
2029年までに第3滑走路供用開始というのは、突貫工事をやっても無理。田んぼを埋め立てる土の量でも大変。強制収用をやることはできない。土地を売らない人もいる。
第3滑走路で菱田の部落が廃村になる。廃村という言葉を知ってはいるが、行くと実感する。滑走路建設が目的だが、トランプがかきまわして先は見えない。温暖化もすごくなる。インバウンド需要に頼って、空港を大きくすべという考え方は正すべきだ。
あきらめずに声上げる
佐藤幸子(被告)
空港公団・会社はああいうやり方しかできない。かつて決戦に参加した駒井野・天浪は荒野になっている中に団結小屋があった、当時、若い血をたぎらせて戦った。
当時は駒井野・天浪の状況をあんなものだと思ったが。現在の横堀を見ると、重機が入ってきて、どういう人が何をやってきたのかの歴史を一切なくすところにいくつもりだ。
現状は厳しい。あきらめずにぎりぎりの可能性を求めてやっていくしかない。
30年前と比べても地球はガタガタ。この先、人間が楽しく人生を送れる未来を第3空港建設の先に見ることはできない。
あきらめずに意見をたたきつける。声を上げていきたい。
空港と環境問題
山口幸夫さん(三里塚大地共有運動の会)
71年9・16東峰事件の当時、東大の教室の一部に当局は入れなかった。当時、環境問題という言葉はなかった。
50年以上が経ち、問題はさらに悪化してきた。本当に先が見えない。
ベトナム反戦闘争、大学闘争、反公害をひっくるめて考えたのは、工業化社会の行く末は分かっている。便利であることはいいことか。別の表現では、能率的であることはいいことか。速さを尊ぶ考え方はいいことなのか。
農業は時間をコントロールすることができない。時間の流れを変えて、それを進歩したという考え方は基本的間違い。
76年9月にワンパック野菜が始まった。その頃の三里塚青年行動隊がどうやってこれからやっていこうか、真摯な議論を積み重ねられた結果だった。
この社会で時間は能率と表現される。ノロノロやっていると、学校の先生は怒る。日本人は能率主義を貴ぶように育てられてきた。
効率という言葉は、一般には間違って使われているが、時間がかかっても、できるだけエネルギーを使わないようにして仕事を仕上げる。三里塚の百姓仕事を見ると、今年の天候・雨量が重要。空港とはまったく相いれない存在。裁判で柳川さんが環境問題という言葉を使った。公害は悪者が決まっている。環境問題は一人一人が関係している。
14年前、福島原発事故の時、郡山の人が“ふるさとを 怒りとともに避難する 何も わりごどしてもねえのに”と歌を詠んだ。
日本近代化は資源獲得と軍事、速さを獲獲する工業化社会へ向けて150年間やってきた。それが「わりごど」の中身。三里塚闘争に参加した人は皆農民の味方をした。農こそが大事だと異議申し立てをした。その後、日本・世界の工業化はどんどん進んだ。一人一人が責任を持つ事態になったのが、柳川さんが言う環境問題。
速いことはいいことか。私も、私の友人も成田空港は使わない。
現代、環境問題と無関係なことはない。ほどほどにが環境問題を考える基本的な理念。時間はほどほどにかける。エネルギーはなるべく使わない。
第3滑走路用地の2割はまだ買収に応じていない。今強制代執行はできない。第3滑走路はできないのではないか。やる気があれば、福島の汚染土を持ってくるということをやると思う。国家官僚は責任をとらない。
きちんと考えないと今後の道を誤る。