座標塾第20期第4回「グローバルサウスの現在 フィリピンを例に」開講
9月27日、座標塾第20期第4回「グローバルサウスの現在 フィリピンを例に」を開講した。講師は大橋成子さん(ピープルズプラン研究所)。
講演で長年フィリピンに住んでいた大橋成子さんは「80年代は第3世界、国際連帯が言われたが、現在は国際協力、グローバルサウスと言われる。
フィリピン共和国は若い国。人口1億1500万人。平均年齢は24歳で日本49歳の半分。
平均6~7%のGDP成長をしているが、サービス業が60%を占める。一人当たりGDPは3623ドル(2022年)。国全体のGDPは世界28位になる。
マニラのビジネス街にはビル群が林立しているが、1200万人の海外送金がGDPの6.9%。内需・不動産ブームから中国からの借款による建設ラッシュ、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の台頭、海外企業の下請け産業(コールセンター、電子カルテ、アニメ制作など)が経済成長の要因。経済成長は「砂上の楼閣」。製造業の発展はない。
経済成長の裏ではバナナ・ココナッツ等を輸出し、米・砂糖など輸入している。農業人口は1980年代50%から2015年30%に減少した。高い医療費、手薄な社会保障制度、足りない教育費という社会状況。
1日の最低賃金はマニラ首都圏の非農業部門645ペソ(約1740円)、ビサヤ地方非農業468ペソ(1260円)農業部門458ペソ。
コロナ禍後の物価高で米1キロ40ペソ(約100円)が65~68ペソ(約184円)に上がった。ガソリン代などは日本と変わらない。
5人家族(子ども3人)の最低経費(月)は持ち家がある場合で20000~25000ペソ(6万円以上)必要。最低賃金で働く人は月9400ペソ(20日/月)。共稼ぎでギリギリの生活。
経済成長と同時進行で軍事化が進んでいる。フィリピンは太平洋の要石といわれる。アジア最大の米軍スービック海軍基地、クラーク空軍基地は1992年撤去されたが。
98年には「訪問米軍に関する地位協定(VFA)」、2014年4月には「防衛協力強化協定(EDCA)」が締結され、米軍長期滞在のためフィリピンの基地に「巡回、駐留」している。さらにフィリピンの基地に米軍施設を建設・運営している。
「台湾有事」をめぐっては、2022年11月、訪比したハリス副大統領がフィリピン防衛に対する米国の決意を表明。全国のフィリピン軍基地5か所を9か所に拡大した。
日本政府は無償資金協力の新制度である「政府安全保障能力強化支援(OSA)を創設。「同志国」の軍事活動に無償資金提供している。曖昧な「同志国」規定でフィリピン、マレーシア、バングラデシュ、フィジーが対象になっている。
23年2月にマルコス大統領が来日。23年4月には史上最高17000人参加の米比合同演習を行った。
24年4月11日には「日米比首脳会談で共同ビジョン声明」が出された。
声明は「経済援助強化」と「軍事協力の拡大」を強調。舞台は南シナ海からインド太平洋へ拡大。
24年4月22日からの17600人規模の演習には海上自衛隊がオブザーバー参加。25年度演習は海上自衛隊も参加予定。
フィリピンは電気自動車バッテリーに不可欠なニッケル世界第2位の産出国。ミンダナオ・パラワン島では先住民族の土地を乱開発する。
軍事演習で生活圏を奪われる漁民、米軍が闊歩する街では性被害・暴力。福祉・教育費は削減。開発で強制退去される都市貧民層。鉱山開発で犠牲になる先住民。
マルコス家の隠し財産は約1兆円と言われる。マルコス政権は外交・軍事・国防は完全にアメリカに委託している。
対外債務は、1287億米ドル(約20兆5000億円)=2024年3月へと2023年3月から8.7%増加した。
『ディスカルテ』がフィリピン庶民のサバイバル術。暮らしの工夫、コミュニティの分かち合いで生きていく」
後半の質疑応答では、フィリピンでの人権侵害を発信する活動について参加者から発言。フィリピンの民衆運動や政党、日本でのフィリピン連帯運動、フィリピンにおけるアメリカに対するコロニアルメンタリティなどについて質問・意見が出された。