報告=なぜ、日本ではジェンダー不平等がなくならないのか

5月19日、第2回「なぜ、日本ではジェンダー不平等がなくならないのか」を開講。
船橋邦子さん(アジア女性資料センター)は「なぜ、日本では「性差別」解消がなかなか進まないのか」について講演。
「いまは政党がジェンダー平等という言葉を使いだしているが、「性差別」という言葉をきちんと使っていきたい。フェミニズムは性差別との闘いだった。なぜ性差別が解消しないのか。
 1番目に性差別解消に向けた「政治的」意思の欠如がある。日本のジェンダーギャップ指数は116位(146国中2022年)。他の国はクオータ制を導入しているが、日本では導入されてない。
 新自由主義と結合した女性の参画と男女の協働が進められてきた。第2にジェンダー不平等を解消するとしてきた「男女雇用機会均等法」「男女共同参画社会基本法」「女性活躍」などが逆に性差別を再生産してきた。
第3に単身高齢女性の貧困問題。私も20年近く取り組んでいるが。日本では性別分業を固定化し性差別を再生産する税・社会制度がほとんど修正されてない。男性を稼ぎ主として税金、年金、家族の扶養を担わせ、妻の無償の家事労働を「内助の功」として評価する一方、労働市場の調節弁としての不安定、低賃金労働という性別分業を強化してきた。
99年、男女共同参画社会基本法が制定されたころからバックラッシュが始まって、千葉県男女共同参画条例制定でも、保守派・宗教右派のバックラッシュに負けてしまった。統一教会問題でバックラッシュのアンチ・フェミニズムが明らかになった。
 日本の状況は性差別撤廃をめぐる国際的動向と乖離している。性差別撤廃で国連が果たした役割は大きい。1975年国際女性年、世界女性会議、79年女性差別撤廃条約に続いて、95年 第4回世界女性会議(北京)、「慰安婦」当事者による声の広がりがあって、地球市民としての女性のネットワークが拡大してきた。
世界では18年3月8日、スペインのフェミニスト・ストライキに500万人が参加している。
 これからの課題としては、女性差別撤廃条約選択議定書の批准が必要。そして、性差別を再生産する税・社会保障制度の変革。中高年単身女性の貧困問題解決。性暴力、性差別との日常の闘いのなかでケアを中心とした地域社会の創造をめざしていく。
ネオリベ、企業フェミニズム、行政フェミニズムから脱却し、性差別主義に基づく軍事主義に反対、戦争をさせない環境づくりを進めていく。
生殖能力のない高齢女性は繋がって、しぶとく長生きして闘い続けよう!」
質疑応答では、女性を家事労働でも労働力としても使おうとする政府の方針への批判。スウェーデンや台湾、フィリピンの社会や運動、4月の統一地方選挙結果をどう見るかなど質問・意見が出された。
講演録は新聞テオリア7月号に掲載予定。
次回座標塾第3回は7月21日18:30~「働くことが壊されている――介護現場から」
講師は伊藤みどり(ホームヘルパー国家賠償訴訟原告)